生き生き健康 No.12 高齢者によくあること―物忘れ―

生き生き健康


高齢者によくあること ー物忘れー 
物忘れ(健忘症)は中年過ぎると誰でもある 
次のような質問をいただきました。「最近物忘れがひどくなって、われながら困っています。特に人の名前が出てきません。手紙を書いていて漢字が思い出せません。認知症の話をよく聞きます。本人も大変でしょうが、世話をする家族の苦労がもっと大変だと思うのです。私もその前ぶれなのでしょうか?予防する方法はありませんか?(65歳・男性)」

 この方のような思いは、恐らく誰にでもあるのではないでしょうか。特に質問にもありますように、人の名前が想い出せないで困ったという経験は多いと思います。

たしかに、ご心配の「認知症」の症状で一番多いのが「物忘れ」ということです。

 しかし、この方の言う物忘れ、つまり単なる物忘れと「認知症」の物忘れとは全く違うものだと申し上げていいでしょう。こういった物忘れは、俗に健忘症というように、中年すぎには誰にでも来るもので、物忘れについて本人自身よく自覚していますし、他人からいわれるとすぐ気が付き、また、忘れていることも後でふと思い出します。全く忘れてしまったり、そのため日常生活ができなくなるほどひどくなることはありません。

認知症の物忘れは日常生活ができなくなる
ところが、認知症の物忘れは、逢った人の名前を忘れるのでなく、逢ったこと自体を忘れるし、たった今起こった出来事も忘れます。たとえば、朝食のおかずに何を食べたかを思い出せないのは健忘症で、食べたこと自体を忘れ、今、御飯を食べ終わったのに「御飯をくれ」というような具合です。  この他に認知症の症状としては、足し算、引き算などの簡単な計算もできなくなり、お金の勘定ができなくなります。また、日常生活の中の簡単な動作、たとえば着物をきたり脱いだり、トイレに行ったりなどのやり方を間違える事があります。毎日住んでいる家の中の部屋を間違えたり、外出したら自宅に帰れなくなってしまう。ひどくなるとご主人や奥さん、子供たちを認識できなくなってしまいます。「あなたはどなた様で・・・・」と。人格的な変化も表れます。意欲も無くし何もしない、関心ももたない、身の回りのことも構わないので、今までは考えられないような不潔な行為を行う。感情的に不安定になったりして怒ったり、泣いたり大声をあげたり。精神症状といわれるのは被害妄想や幻覚です。「物を盗まれた」とか、果ては「殺される」といったりして周囲の人を困らせます。先ず、原因から見ると二つに大別できます。
第一に「脳血管性認知症」というのがあります。脳の血管が破れたり、つまったりすると脳に栄養分や酸素が通わなくなりますから、その部分の障害が起こるのです。脳血管の障害ですから高血圧、心臓病、動脈硬化、腎臓病、糖尿病などが引き金になるのです。つまり生活習慣病(成人病)がその原因ですから、その予防をすることがこの病気の予防になるわけです。物忘れがすぐ認知症だと心配する必要がないことはおわかりいただけたと思いますが、今から本当の「認知症」にならないとは限りませんから予防の話に移ります。 

日本人はアルツハイマー型認知症が多い

日本人には高血圧や脳卒中が多いので、このタイプの「認知症」が多いのだと思われてきましたが、最近の研究では次の型のタイプが多いのではないかと言われるようになりました。  それは、最初に報告した人の名前をとって「アルツハイマー型」といいますが、脳の萎縮が起こって機能が減退するもので萎縮型ともいい、人によっては本態性認知症という人もいます。その原因は、現在でも十分には解明されていません。原因もわからないので予防も難しいといわれてきました。しかし、よく見てみると、病気や骨折などで「寝たきり」になったりすると、それがきっかけで症状が表れたり、配偶者や家族との死別や家庭内のトラブル、環境の急激な変化、仕事から離れ何もすることがなく生活の芯をなくしてしまったり、自分の存在感を失ったりしたときに始まるように思えます。私たちの身体では使えば発達しますが、使わないと衰えていきます。従って、かねてから豊かな趣味を持ち、柔軟な精神生活を送ることが大切です。本を読んだり、新聞を読んだり、日記や手紙を書いたりなども必要ですが、頭を使えばいいというものでもありません。御存知と思いますが、脳の左半分(左脳)は知性の脳といって子供の時からよく使ってきました。物忘れの予防に大切なのが右半分(右脳)だといわれます。これは感性の脳といって、物事に感動を覚えるところです。従って、他人とのかかわり合いが大切で、皆でわいわい楽しくやること。働くことも遊ぶこともです。いくつになっても生活に張りと生き甲斐を求め、感動を忘れないことが大切です。 最後に、気になる物忘れの症状があるとき、実は腫瘍や脳炎などの脳の病気、極端な貧血、ホルモン系の病気、あるいは服用している薬のせいで脳の機能低下が来る事があります。  身内や知り合いに「ちょっとおかしいのでは・・・」という人がいたら隠さないで是非専門医に相談しましょう。