生き生き健康 No.23 ももから生まれる健脚人生

生き生き健康


ももから生まれる健脚人生
北原 道宏
財団法人体力つくり指導協会 主任研究員
1.太ももの話
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太ももの筋肉は、膝(下肢)を持ち上げたり伸展させたりする役割を持っています。そして、身体を支える「抗重力筋」の一つで、ジャンプをするときや歩いている途中でブレーキをかけるなど人の身体活動に大きく関わっています。太ももの表面の筋肉は、ももの真ん中の大腿直筋、内側の内側広筋、外側に張り出す外側広筋、大腿直筋の真下にある中間広筋の4つの筋肉からできていて、総称を大腿四頭筋と呼んでいます。運動や歩行量の不足が慢性的に続くと他の筋肉と同じく大腿四頭筋もだんだんやせ細り、膝の屈伸に支障をきたし歩くことも困難になってきます。日常生活において意識して歩くことは、この大腿四頭筋の筋肉量を最低限維持することに役立ちます。
2.大腿四頭筋と膝痛は関係が深い
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 大腿四頭筋の大腿直筋と中間広筋は膝の皿の上の部分にくっついていて、さらに外側広筋が皿の外側に、内側広筋が皿の内側にくっついています。そして皿の下でも膝蓋靱帯となって下腿の骨(脛骨)にくっついています。つまり膝の皿の上、内、外、下で大腿四頭筋がバランスよく引っ張り合って皿をコントロールしているのです。そして膝痛は多くの場合、皿の引っ張り合いのバランスが崩れて発生することが多いようです。
①筋肉の萎縮に注意 一般的に筋肉はしっかり使うと「頼られている」と意気に感じて増大し、あんまり使わないでいると「必要とされていない」と萎縮していく性質があります。病院で数日間寝たきりになるだけですぐに身体中の筋肉がやせてしまうのはそのせいです。日頃から適度に運動をして、筋肉の量を維持することが大切なのです。
②大腿四頭筋が萎縮すると 大腿四頭筋の萎縮が進むと、膝関節の上の大腿骨と下の脛骨との間隔が狭くなります。そして、過体重や、立ったり歩いたり、膝を曲げたりすることでさらに膝関節の間隔が狭くなっていきます。結果、大腿骨と下腿の骨(脛骨)、膝の皿と大腿骨、大腿骨と膝の半月板が擦れたりして膝関節に痛みが生じやすくなります。
③歳を取ると誰でも膝痛が起きてしまうのか 皆さんはいかがですか。前述のように大腿四頭筋が萎縮して細くなると基本的には膝痛が起こるので歳を取ると膝痛は起こりやすくなります。しかし、若い人でも「ももを細くするとかっこいい」などと言ってスタイルばかり気にしていると、早い時期に膝痛に悩まされる可能性があります。逆にいえばももの筋肉の強化運動をすることで高齢であっても膝痛を発生させないこともできるといえます。
④膝痛の予防法 食事の面では、エイヒレ、牛筋、鳥の手羽先などの食品は、コラーゲンの働きにより関節部分の軟骨を補強に役立ちます。あわせて運動を習慣化することが必要です。すでに膝痛をかかえている人は膝に痛みが出ないように工夫することが必要になります。でも、コラーゲンの摂り過ぎには、別の意味で注意を要します。
3.とくに内側広筋を鍛える
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 大腿四頭筋の中で、膝の皿の内側にくっついている内側広筋は外側の外側広筋よりも筋肉の衰えが早いといわれます。外側と内側のバランスが崩れると膝に痛みを感じるようになり、歩行や運動を避けるようになりがちです。運動量の減少により、さらに大腿四頭筋全体の筋肉の減少が進むと歩行に大幅な支障をきたすことになりひどい場合は寝たきりになることもあります。予防として、内側広筋の衰えを感じた時点で早めに内側広筋を中心にした太ももの運動を開始し、継続することをお勧めします。
4.家庭でできる簡単な「太ももの運動」
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[実技方法1]: 椅子に座って両脚を伸ばす
ももの筋肉の衰えがかなり目立つ方に有効な運動です。この運動を日常的に行い、筋肉の回復を図りましょう。この運動は脚力に自信のある方にも有効です。できるだけももに意識を集中させて行ってください。
①椅子に浅めに座ります。
②両手で椅子の横をつかみます。
③「イチ」で両膝を伸ばして両脚を上げて、両手で支えます。(写真1)
④「ニ」で両脚を上げたまま1秒ほど保ちます。
⑤「サン・シ」で2秒ほどかけてゆっくりと両脚を下ろします。
⑥「イチ」「ニ」「サン」「シ」を1回として繰り返し10回行います。
⑦10回をセットにして、1セットから3セット行ってみましょう。 ももに張りを感じるように、上げ下げを行います。
*特別練習
応用として、両膝の上の内側に小さなボールを挟んで上げると、ももの内側の内側広筋をしっかり鍛えることができます。
[実技方法2]:つかまってスクワット(しゃがむ)
壁などにつかまって行うと、ももに力が入っていることをより強く意識することができます。トレーニング部位を意識することはとても大切なことなのです。
①両手で壁や棒につかまって身体を支持し、両脚を肩幅またはそれより少し開いて立ちます。
②「イチ」で両膝を曲げて、両膝に痛みがない角度で保ちます。そのとき両膝をつま先よりも前に出すようにします。(写真2)
③「ニ」で両膝を曲げたまま1秒ほど保ちます。
④「サン・シ」で2秒ほどかけてゆっくりと両膝を伸ばします。
⑤「イチ」「ニ」「サン」「シ」を1回として繰り返し10回行います。
⑥10回をセットにして、1セットから3セット行ってみましょう。
*特別練習
応用として、両膝を内側に寄せてつま先より前に曲げて出すと、特にももの内側の内側広筋を鍛えることができます。内側広筋を鍛えることで膝痛の予防・改善が期待できます。
*回数はあくまで目安です。自身の身体の調子に合わせて調整してください。
*膝に痛みを感じるときはそれ以上行ってはいけません。回数を減らすか、曲げる角度を浅くするなど痛みを感じないように工夫してください。
*なお、運動中は呼吸を止めないように注意しましょう。