生き生き健康 No.21 運動は副作用の無い健康の薬

生き生き健康


運動は副作用の無い健康の薬
北原 道宏
財団法人体力つくり指導協会 主任研究員
1.はじめに
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 こんにちは、今回より、「いきいき健康」コーナーで12回に渡り、健康運動の情報を提供させていただきます。よろしくお願いいたします。私は現在、65歳以上の方々を対象に運動教室を通じて健康づくりの支援活動を行っています。このコーナーでも、健康に関する情報と運動の実技の紹介をとおして、皆様の生活体力の維持増進に向けた日常的な運動を支援してまいりたいと思います。
2.身体を動かすことは楽しい
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  最近では街中でウォーキングを行う方がとても目立つようになりました。しかし、それでもまだ、運動を習慣化している方は決して多いとは言えません。
それは、「運動」は行ったほうがいいと理解しているけれども、「きつい」とか「面倒」などという理由でなかなか実行できないと考えている人がまだ多数を占めているからではないでしょうか。運動はきついものというイメージを捨て、身体を動かすこと全てが運動だと考えると取り組みやすいと思われます。
運動は薬と同じくらい身体の調子をよくしてくれることがあります。しかも、自身の能力に応じて実施でき、副作用もありません。「楽な運動」から「ちょっとだけきつい運動」までの範囲で、自分でやりやすいようにうまく選択して、まずは家庭などで手軽に身体を動かすことから始めてみましょう。そして少しずつ毎日の運動習慣につなげて行き、身体を動かすこと自体を楽しみながら健康な人生を送っていただきたいと思います。
3.筋力運動も健康に必要
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  運動には筋力、持久力、柔軟運動(ストレッチ)などがあります。どれも大事な運動ですが、始めに筋力運動について取り上げたいと思います。
それは人間が生物として動くためには、骨格を支える筋肉が必要だからです。筋肉は、加齢に伴い、反応も徐々に低下して行きます。
そのため筋力運動はある期間だけ実施するのではなく、継続的に行うことが必要です。筋力運動の効果は、それによって筋肉が肥大してパワーが増大するというよりも、適切な刺激が神経系の機能を改善し動きやすさを増すという効果が大きいといわれます。しかし、高齢者でもまちがいなく筋線維の肥大が起こることが確かめられていますから、筋力向上のためにも無理のない範囲で少しずつ「強化」を目指すことも可能です。     
4.重力に負けないで元気に動く
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   私たち人間は2本足で重力に立ち向かいながら動くことで生活しています。その重力に抵抗して立っている姿勢を保つために働く筋肉を抗重力筋といいます。身体を支える土台となるのは骨格であり、骨格を補助するために筋肉が働き、筋肉に栄養を与えるために血液が循環します。筋肉が衰えると身体を動かすことがむずかしくなるので、筋力が衰えないようにしなければなりません。
 身体にはたくさんの筋肉の種類がありますが、それぞれの部分ごとに分けてトレーニングすることは、運動方法も複雑になり、また時間がかかりすぎるなどでなかなかできません。日常生活に必要な筋肉(抗重力筋)を中心に筋力運動をするということは、立つ、座る、歩く、ものを持つなどといった生活の中にある動作を積極的に行うといった方法でも可能です。
また、この方が時間的にも効率がよいといえます。その際、身体のどの部分の筋肉がどのような働きをしているのかを知ることは、“日常動作も立派な運動である”という考え方を支えてくれることでしょう。  “日常動作も立派な運動である”という考え方を持ち、ときには意識的にそして積極的な運動としてトレーニングを行うのが良いでしょう。
[身体の前面にある抗重力筋] ①すねの筋肉(前脛骨筋) ②太腿の前面の筋肉(大腿四頭筋) ③腰骨から骨盤にかけての筋肉(腸腰筋) ④腹筋群 ⑤首を前に曲げる筋肉(頸部屈筋群)
[身体の後面にある抗重力筋] ⑥ふくらはぎの筋肉(下腿三頭筋=腓腹筋・ヒラメ筋) ⑦太腿の後面の筋肉(ハムストリングス) ⑧お尻の筋肉(大殿筋・中殿筋) ⑨背中の筋肉(脊椎起立筋群)
*立位の姿勢を保つために、身体の前面の筋肉よりも後面の筋肉の方が重要な働きをしています。
5.イスに座ってできる簡単な「すね(前脛骨筋)の運動」
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意識的な運動として、すねの筋肉の簡単な運動を紹介します。
つま先をあげる動作により、すねの筋肉が緊張して強化され(写真1)、親指側を押しつけながらかかとを上げると、今度はすねがゆるんでストレッチされます(写真2)。

このすねの筋力は転倒予防にもつながります。すねの筋力が衰えると、歩行中に自分で思っているよりもつま先が上がらなくなり、道路上のちょっとした突起物に足が引っかかり転倒するなどが考えられるのです。 下記に紹介するすねの運動は家庭でなにげなくイスに座っているときなど、どこでもできるのでぜひ行ってください。
その他、車や飛行機などで長時間座った状態が続くと、血液循環が悪くなります。すねの運動は血液循環を促しますので、エコノミック症候群の予防にもなります。
[実技方法]:すねの強化とストレッチの運動
① イスに座ります。
② 「イチ」で両足の指先を反りながら上げ、1秒ほど止めます。(すねの強化・写真1) ③ 「ニ」で両足の力を抜いてトンと床に下ろし、1秒ほど止めます。
④ 「サン」でつま先(親指)を床に当ててかかとを上げ、1秒ほど止めます。(すねのストレッチ・写真2)
⑤ 「シ」で両足の力を抜いてトンと床に下ろし、1秒ほど止めます。
⑥ 「イチ」「ニ」「サン」「シ」を1回として繰り返し10回行います。
⑦ 10回をセットにして、1セットから3セット行ってみましょう。