鎌倉彫工芸館

受付・施設管理業務 佐藤 栄子 (腰越)
 鎌倉行きの江ノ電にガタゴトと揺られながら、毎日景色の変わる七里ヶ浜の海を眺め、なんだか懐かしさを感じる住宅街の軒先を抜けて和田塚駅で降りると、そこから由比ヶ浜の海岸に向かって2分ほどの所に、鎌倉市を代表する伝統的工芸品を販売する鎌倉彫工芸館があります。私は何10年も住んでいて幾度となく通り過ぎてしまった、そんな静かな雰囲気のする佇まいが私の職場となりました。
 10年以上も仕事の現場から離れていたので、面接の時は、どんな仕事の内容なのか、私に出来るだろうかと、とても不安でした。お話を伺ってみると経験のないレジや、歴史の古い鎌倉彫の販売、事業協同組合に関する事務等と伺いました。理事長さんや事務の方からの説明の後で「何か質問はありますか」と聞かれても、質問する内容が思い浮かばず「質問したい質問がわからないのですが」と思わず言ってしまいました。その時に、かなりプロフェッショナルな仕事の内容だなとの印象がありました。それでも鎌倉彫という工芸作品にはとても魅力と興味を感じ、とにかく教えて頂きながら覚えていこうと思い採用して頂きました。早々と歓迎会を開いて頂きシルバー会員として、工芸館のお仕事のスタートとなりました。

今年の4月から引継ぎが始まり、仕事は週2日でもう一人の方と交代です。朝、職場に着くとまずは駐車場のチェーンをはずし、事務所の中に入ると、鎌倉彫工芸士さんの入魂作品が迎えてくれます。シャッターや窓を開け看板を出したり事務所のお掃除をしてレジを開いて、10時から開館です。
 先輩の仕事の指示に従い、コピーをとったり、郵送の準備や電話の応対・事務雑用、販売など、お客様が漆や木地・刷毛・顔料などの材料を購入に見えて質問されても専門的な材料の名称も読めないことは多々あり、お客様の鎌倉彫に関する質問にはほとんどお応えできず、何とも情けなく歯がゆいばかりです。お客様のほうが良くわかっていて教えていただく場面は日常茶飯時です。

そんな中でも、鎌倉彫のお盆や茶托・お箸やブローチ等を買って頂いた時などはとても嬉しく、慣れないレジを間違えないよう打ち込みレシートを差し上げ、「ありがとうございました」と挨拶をして、お客様が嬉しそうに大事そうに持って帰られる後姿にホッと致します。 毎週土曜日は職人さんが交代で実演やお客様の質問に答えてくれますが、その内容はとても勉強になり興味深いです。
 鎌倉彫は鎌倉幕府が開かれて800年ほど前からの歴史があり、仕上がるまでには彫りや漆塗りなど、何十工程もの過程を経て作品となる、正に芸術作品であり、高価な物である事も納得できますが、100年に1度という経済危機の中での販売も先細りの難しい状況です。経済も人の心も豊かさを取り戻し、作家の方たちが思う存分腕を揮い素晴らしい作品が途絶える事無く次の世代へと受け継がれて行くと良いなーなどと思いながら、5時閉館前のレジ締めがピッタリ合うとホッとして戸締りをして、最後に駐車場にチェーンをかけて1日の仕事が終わり、また江ノ電に乗って夕日の海を眺めながら帰途に着きます。